『蛍の光』の原曲があった:なぜ日本の別れの曲になったのか。
どこからか聞こえてくる『蛍の光』のメロディに、ふと足が止まる。そんな経験はありませんか? 窓の外に広がる景色が少しずつ春の色を帯びてくるこの季節、私たちは何度もこの曲に見送られ、そして新しい門出を迎えてきました。今日は、日本人の心に深く刻まれたあの旋律について、少し思いを馳せてみたいと思います。
ショッピングを楽しんでいる最中、店内に流れ出す『蛍の光』。あのアナウンスを聞くと、『あ、もう帰らなきゃ』と急に現実に戻されるような、少し寂しい気持ちになりますよね。でも実は、私たちがお店で耳にしているあの曲、正確には『蛍の光』ではないかもしれないという……そんな意外な事実をご存知でしょうか?
『蛍の光』のルーツ:海を越えてきたメロディ
「蛍の光」の原曲はスコットランド民謡「Auld Lang Syne(久しき昔)」であります。
「久しき昔」は「蛍」で紹介される前から、日本の教会では讃美歌として歌われていました。
第370番「目覚めよわが霊(たま)」で、原詩はイギリスの牧師、フィリップ・ドッドリッジによるものです。
「蛍の光」は日本の教会で歌われていた讃美歌だったんですね 👇
「蛍の光」の原曲はスコットランド民謡だった
「蛍の光」の原曲は、スコットランドの民謡である「オールド・ラング・サイン(Auld Lang Syne)」です。スコットランドの古い言葉で「久しき昔」や「旧友と過ごした時間」といった意味があります。
伝統的な民謡をベースにしているため、正確な作曲者は不明ですが、18世紀の詩人ロバート・バーンズが歌詞を整えたことで世界中に広まりました。
『蛍の光』世界での使われ方は「お祝い」の意味がある
日本では「別れ」や「終了」のイメージが強いですが、世界(特に英語圏)では少しニュアンスが異なり、以下のような意味で歌われています。
- 再会を祝う歌: 「古い付き合いを忘れていいものだろうか(いや、忘れない)」と歌い、再会を祝して乾杯する内容です。
- カウントダウンの定番: 大晦日から新年に変わる瞬間、みんなで肩を組んで歌う「おめでたい曲」として親しまれています。
『蛍の光』はなぜ日本の「別れの曲」になったのか
明治時代(1881年)、小学唱歌として日本に導入された際に、稲垣千穎(いながき ちかい)によって日本語の歌詞がつけられました。
「蛍の光」の歌詞と意味
当時の唱歌の歌詞には、教育的な思想を盛り込むことが主流でした。
1,蛍 の光 窓の雪 書(ふみ)読む月日 重ねつつ
何時(いつ)しか年も 杉の戸を 開けてぞ今朝は 別れ行く
2,止まるも行くも 限りとて 互(かたみ)に思う、千萬(ちよろず)の
心の端(はし)を 一言に 幸(さき)くと許(ばかり) 歌うなり
「蛍の光」歌詞の解説と意味
1番:別れの時
●「蛍の光、窓の雪」:中国の故事「螢雪の功(けいせつのこう)」が元になっています。
《 貧しくて灯油が買えない学生が、夏は蛍の光、冬は窓の外の雪明かりで勉強に励んだという エピソードです。》
●「書読む月日、重ねつつ」:長い間、懸命に勉強を続けてきたことを意味します。
●「いつしか年も、杉の戸を、明けゆく朝の、別れかな」: 気づけば年月が過ぎ、学校を卒業して旅立つ朝が来た、という別れの情景です。
2番:再開の誓い
●「止まるも行くも、限りとて」: この学校に残る者も、新天地へ行く者も、今日が別れの日であるということ。
●「互いに思う、千万の、心の端を、一言に」: 言い尽くせないほど多くの思いを、一言に込める。
●「幸く(さきく)とばかり、歌うなり」: 「無事でいてほしい」「幸せであってほしい」という祈りを込めて歌う。
- 歌詞の由来:明治14年に作られた日本語の歌詞は、中国の故事「蛍雪の功(けいせつのこう)」を題材にしています。
- 卒業の象徴へ: 「共に苦労して学んだ仲間が、それぞれの道へ旅立つ」という歌詞の内容が、当時の学校の卒業式にぴったりだったため、別れの定番ソングとして定着しました。
【動画】
『蛍の光』が閉店のBGMになったのはなぜ?
ちなみに、お店の閉店時に流れるのは厳密には「蛍の光」ではなく、その編曲版である**「別れのワルツ」**という曲です。 NHKのラジオ番組でこの曲が流れた際、聴取者から「寂しいけれど、すがすがしい別れの気分になる」と大反響があったため、公共の場での「終了のサイン」として定着したと言われています。
「別れのワルツ」:映画「哀愁」で使用された曲です。(この曲は3拍子になっています)👇
まとめ:心に灯る「蛍の光」
時代が変わっても、このメロディを聞くとふと足が止まり、懐かしい記憶が蘇ります。「蛍の光」は単なる別れの歌ではなく、共に過ごした時間を慈しみ、新しい一歩を祝うための合図なのかもしれません。
皆さんの心の中には、この曲と共にどんな景色が浮かびますか?次にこの旋律を耳にした時は、ぜひその大切な思い出を噛み締めてみてください。


