北欧の音楽:大自然から生まれた音楽(クラシック・ポピュラーとの共通性)を解説します。

皆さんは「北欧の音楽」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?神秘的なフィヨルドの風景、オーロラの輝き、それとも長い冬の夜の静けさでしょうか。北欧の音楽は、まさにこれらの壮大な自然や人々の暮らしに根ざした、奥深く魅力的な世界を私たちに届けてくれます。
このブログでは、北欧の音楽が持つ多様な顔を探求していきます。伝統的な民族音楽に息づく素朴な美しさから、世界を席巻するポップスやロックなど北欧が生み出す音の風景は実に豊かです。
北欧のクラシック音楽
クラシック音楽といえば、ドイツ、オーストリア、イタリアなどが思い浮かぶ方も多いかもしれません。しかし、その北方に位置する国々からも、世界中の人々を魅了する素晴らしいクラシック音楽が数多く生まれています。独特の叙情性、壮大な自然への畏敬の念、そして時に激しい情熱を秘めた北欧のクラシック音楽に触れてみたいと思います。

「北欧」とは、一般的に、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、アイスランドの5か国を指します。これらの国々は、地理的にヨーロッパの北部、特にスカンディナビア半島と周辺の地域に位置しており、共通の文化や歴史、高福祉社会の実現など、共通点が多いため、「北欧」として一つの地域として認識されています。
今回紹介する音楽は、アイスランドを除いた4か国の音楽を紹介したいと思います。
以下に、時代を追ってその概要をまとめます。
初期(中世からバロック時代)
- 宮廷音楽の発展: 17世紀のバロック時代には、デンマークのクリスチャン4世の宮廷でモウンス・ペーザスン、スウェーデンの宮廷でデューベン父子などが活躍しました。
- キリスト教文化の基底: 西欧と同様に、キリスト教文化が音楽の基盤となっていました。例えば、スウェーデン支配下のフィンランドでは、16世紀の聖歌集『ピエ・カンツィオーネス』などが残されています。
古典派〜初期ロマン派
- この時代、北欧はヨーロッパ音楽の中心地であったドイツ語圏に比べると、独自の作曲家が少なく、音楽消費地としての側面が強かったと考えられます。
- しかし、スウェーデンには「スウェーデンのモーツァルト」とも称されるヨーゼフ・マルティン・クラウスのような作曲家もいました。
国民楽派の台頭(19世紀後半〜20世紀初頭)
北欧のクラシック音楽が国際的に注目されるようになったのは、この「国民楽派」の時代です。ドイツ・イタリア・オーストリアといった音楽の中心地から離れた国々で、自国の民謡や歴史、自然を題材にした、民族色豊かな音楽が生み出されました。
- フィンランド:ジャン・シベリウス (Jean Sibelius, 1865-1957)
- フィンランドを代表する作曲家であり、国民楽派の巨匠として世界的に知られています。
- フィンランドの自然や叙事詩『カレワラ』にインスパイアされた壮大な交響曲や、交響詩『フィンランディア』などで、フィンランドの国民的アイデンティティを音楽で表現しました。
- 彼の音楽は、北欧の厳しい自然や神秘的な雰囲気を反映していると言われます。
- デンマーク:カール・ニールセン (Carl Nielsen, 1865-1931)
- シベリウスと並び称される北欧の重要な作曲家の一人。
- 民俗的な要素を取り入れつつも、独自の力強い音楽語法を確立しました。交響曲や管楽五重奏曲などが知られています。
- ノルウェー:エドヴァルド・グリーグ (Edvard Grieg, 1843-1907)
- ノルウェーの民族音楽を深く探求し、自身の作品に取り入れました。
- 劇付随音楽『ペール・ギュント』組曲やピアノ協奏曲などが有名で、叙情的で民族色豊かなメロディ―が特徴です。
※『ペール・ギュント』はイプセンが1867年に書いた作品である。元は上演を目的としないで、読まれることが目的であるレーザドラマが目的で書かれました。その後イプセンはこれを舞台で上演することになりました。本来は舞台向きでないこの作品の上演に当たって、イプセンは音楽によって弱点を補うことを考えました。そこで、当時作曲家として名を上げつつあった同国人のグリーグに、劇音楽の作曲を依頼して世に出ることになりました。
この「ペールギュント」の朝という曲は、日本でも大変有名な曲です。皆さんも聴いたことがあるのではないでしょうか!
- スウェーデン:フーゴ・アルヴェーン (Hugo Alfvén, 1872-1960)
- 後期ロマン派の流れを汲む作曲家で、国民楽派的な色彩も持ち合わせています。
- 「夏至の徹夜祭」という副題を持つ「スウェーデン狂詩曲第一番」などが代表作です。
狂詩曲とは
音楽用語で『狂詩曲』は私のブログの中で初めて出てきた言葉だと思います。ここで説明したいと思います。
狂詩曲とは、またはラプソディと言い、自由奔放な形式で民族的または叙事的な内容を表現した楽曲であり、小品の一種。異なる曲調をメドレーのようにつないだり、既成のメロディーを引用したりすることが多い。狂詩曲は、民族音楽や物語、歴史的な出来事など、様々なテーマを扱います。民族音楽のメロディーやリズムを取り入れたり、物語を基にした展開をしたりすることがあります。
北欧のポピュラー音楽
北欧諸国、すなわちスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、アイスランドは、その美しい自然景観や洗練されたデザインだけでなく、ポピュラー音楽の分野においても世界に比類なき影響を与え続けています。単にABBAやビョークといった世界的スーパースターを輩出しただけでなく、北欧の音楽シーンは常に新しいサウンドとトレンドを生み出し、多様なジャンルと実験的なアプローチでリスナーを魅了してきました。
メランコリックで叙情的なメロディ、透明感のあるボーカル、そして時に大胆なエレクトロニックサウンドの融合は、北欧音楽を特徴づける要素と言えるでしょう。インディーポップやエレクトロニカから、ヘヴィメタル、ジャズ、フォーク、そして現代的なR&Bやヒップホップに至るまで、その音楽性は驚くほど多岐にわたります。
北欧のアーティストたちは、伝統的な音楽的ルーツを大切にしつつも、常に国際的な視野を持ち、最新の音楽技術や制作手法を積極的に取り入れることで、独自の進化を遂げてきました。彼らの音楽は、時に北欧の厳しい自然や深い歴史からインスピレーションを得て、時にグローバルな社会現象や個人的な感情を表現します。
スウェーデン
ABBA
男性2人、女性2人のグループ。1972年に結成。1974年にユーロビジョン・ソング・コンテストに出場し、スウェーデン代表として初めて優勝し、その後1982年の活動停止までシングルとアルバム世界中の音楽チャートを席巻しました。活動停止後もベスト盤『アバ・ゴールド』がロングセラーを続け、『アバ・ゴールド』だけで3,000万枚以上の売り上げを記録するなど、ポピュラー音楽界で商業的に成功したグループの1つとして知られています。2010年にはロックの殿堂入りを果たしました。
2021年に40年ぶりのアルバムを発売し、2022年からはデジタル・アバターとなった4人が登場するバーチャル・コンサート『ABBA Voyage』を開催しました。
ノルウェイ
AURORA
1996年生まれ。ノルウェイのシンガーソングライター兼音楽プロデューサー。本名はオーロラ・アクスネス。ジャンルはエレクトロ・ポップに分類されることが多い。主な作品の主題としては、感情や政治、セクシャリティー、死などが挙げられる。生まれはノルウェイのローガラン県の自然豊かな町に育ちました。
音楽を始めたのは6歳のころで、友人がアップロードした音源をきっかけとし17才でデビューしました。その後2014年以降現在までデッカレコードより作品を発表しており、自国にとどまらずヨーロッパやアメリカのチャートにランクインしています。
デンマーク
Agnes Obel
音楽一家のもとに生まれ幼少期からピアノを習い始める。2009年、”Obél”名義で制作されたヨーロッパ・デビュー・シングル「Just So」が、ドイツのテレビCMに抜擢され、一気に評判を高める。2010年、デビュー・アルバム『Philharmonics』をリリース。デンマークアルバムチャート7週連続1位を獲得した他、ヨーロッパ各国で大ヒットを記録。
2011年10月、ヨーロッパで優れた成績を残した新人アーティストに贈られる「ヨーロピアン・ボーダー・ブレーカーズ・アワード 2012」を受賞した。
フィンランド
HIM(ヒム)
フィンランドのロック・バンド。1995年、ヘルシンキにてヴォーカルのヴィレ・ヴァロが結成した。
フィンランド出身では初めてアメリカでゴールドディスク認定を受けたバンドである。本国フィンランドではダブルプラチナム、ドイツでも5作品がプラチナム認定されている。
※ プラチナム認定: 一定基準を達成した作品に認定証が与えられる認証
まとめ:壮大な自然の中で、養われた感性を持つ北欧の音楽
北欧音楽の奥深さに触れる旅、代表する一部分ではありますが、紹介してきました。
北欧の音楽は、中央、南ヨーロッパに比べて沢山はありませんが、、音楽も独自に発展していった感じがします。多様な魅力に焦点を当ててきました。時に心を揺さぶる叙情的なメロディー、時に大地を感じさせる力強いサウンド、そして時に実験的で前衛的な表現。北欧の音楽は、その豊かな自然や文化、そして人々の精神性を反映し、多岐にわたるジャンルとスタイルで私たちを魅了してくれます。
北欧の音楽は、単なるエンターテイメントとしてだけでなく、彼らの歴史、社会、そして未来に対するメッセージを内包しています。厳しい冬の寒さや白夜の神秘、そして壮大な自然の中で培われた感性が、彼らの音楽に深みと奥行きを与えているのです。