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「雪の降る街を」:幻想的な美しい歌の誕生を、ひも解いてみます。

「窓の外をふと見ると、いつの間にか街が白く染まり始めていました。そんな時、決まって頭の中に流れ出すメロディがあります。

『雪の降る街を、雪の降る街を……』

低く、静かに響くその歌声は、冷たいはずの雪をどこか温かく、そして切なく包み込んでくれるようです。今回は、昭和から令和へと歌い継がれる名曲『雪の降る街を』の魅力について、ひも解いてみたいと思います。

昭和30年代生まれの、私の生まれ故郷である福岡は、冬のなると雪が毎年降っていました。
その後、関東に移り住んでからは、雪が深々と降ることは数回しかなかったような気がします。

雪が降るときの静けさは、時を止めてしまうような、また厳かな儀式のような幻想的な感じがします。

「雪が降る街を」の誕生の背景について

この曲の初出は1952年(昭和27年)1月にNHKラジオ放送された連続放送劇「えり子とともに」の挿入歌として生まれました。

ある回の放送前日におけるリハーサルで、時間が余ることが分かり、その時間を埋めるべく急拵えで制作され、新しい劇中歌として歌われたが、人気が出たため2番以降が制作され,高英男(シャンソン歌手)の歌唱によりレコードも制作されヒットしました。👇動画あり

後に、作曲者自らの手で女声合唱、混声合唱に編曲されています。

作詞、作曲者について

作詞:内村直也(1909年8月15日~1989年7月27日)

日本の劇作家、翻訳家。本名:菅原実(すがわら みのる)。兄は菅原卓(日本の劇作家。第2次世界大戦後、アメリカ演劇を日本に紹介したことで知られています)であります。

東京生まれ。1932年、慶応義塾大学経済学部卒。岸田國士に師事、同人誌『劇作』を編集担当。1935年に処女作「秋水嶺」を発表、上演されました。国際演劇協会日本センター長を務めるなど戦後新劇界の重鎮でした。

作曲:中田喜直(1923年8月1日~2000年5月3日)

父親は「早春賦」(このブログに掲載)で知られる作曲家の中田章です。喜直は三男であり、親族は音楽一家であります。歌手のはいだしょうこさんは最後の愛弟子と言われています。

父が音楽家だったため、幼少より作曲等音楽に興味をもったが、物心がついた頃には、父はすでに病床に伏しており、音楽については兄の一次から教わったそうです。後に東京音楽学校(現:東京芸術大学)予科に入学、翌年に本科器楽部ピアノ専攻に進学しました。


終戦後、歌曲の伴奏を務めるかたわら、作曲家としての活動を本格的に開始しました。NHKラジオ歌謡の番組にも携わり、「夏に思い出」(このブログに掲載)や「雪の降る街を」などを生み出しました。多くの作品は現在でも歌われています。一方で、晩年は自らの作品のみならず、古くからの名曲の普及にも尽力するようになりました。

作曲者の中田がこの曲を作るに際しては、知人である菅原喜兵衛宅のある山形県鶴岡市で見かけた降雪風景がこのメロディを紡いだと伝えられ、現在も毎年2月に行われる「鶴岡音樂祭」ではフィナーレにこの曲が歌われている(作曲者存命中は、本人が鶴岡に出向き自ら指揮していました。没後は夫人がその任を果たしていました)。

歌詞

1,雪の降る町を 雪の降る町を
思い出だけが通り過ぎて行く
雪の降る町を 遠い国から落ちてくる 
この思い出を この思い出を いつの日か包まん 暖かき幸せの ほほえみ
2,雪の降る町を 雪の降る町を
足音だけが追いかけて行く 
雪の降る町を 一人心に満ちてくる
この悲しみを この悲しみを いつの日かほぐさん 緑なす春の日の そよ風
3,雪の降る町を 雪の降る町を
息吹とともにこみ上げて来る 
雪の降る町を 誰も分からぬ我が心
この虚しさを この虚しさを いつの日か祈らん 新しき光り降る 鐘の音

  



歌詞が描く「切なさ」と「希望」

  • 情景描写: 「思い出だけが 通り過ぎてゆく」という歌詞の美しさと孤独感を表しています
  • 感情の動き: 悲しみの中に、どこか前向きな「春への予感」や「歩き出す決意」が隠されています。
  • 共感: 誰にでもある「忘れられない過去」を雪が優しく包み込んでくれるような感覚。

曲調

曲の始まりはイ短調で、静かに暗くふけるように始まっています。
〈遠い国から〉から一転、イ長調に転調して闇に支配さえれていた大気が、突然明るく光り耀き、未来と希望を予感させる一筋の光が差し込んで終えるような感じになっています。

【動画】

最初に発表された シャンソン歌手 高英男氏(1918年~2009年)によって歌われました。

「雪の降る街を」の隠された、意外な一面は?

なんと次の曲に似ていませんか?

ピアノ演奏:ユリアンナ・アンドレーエヴナ・アヴデーエワ(ロシア)

この曲はショパン作曲 幻想曲ヘ短調 作品49ですが、最初のメロディーがにています。
定かではないですが、ショパンへのオマージュ(尊敬・敬意)ではないか?と言われています。

まとめ:降り積もる記憶、かすかな春の音

窓の外を眺めれば、音もなく雪が舞い落ちている。そんな夜、ふと頭の中に流れ出す旋律がある。「雪の降る街を」――。あの少し物悲しく、けれど凛としたメロディは、聴く者の心を一瞬にして遠い日の追憶へと連れ去っていきます

雪が降ると、世界は魔法にかかったように静まり返る。車の音も、人々の話し声も、すべてが白い綿の中に吸い込まれていく。その静寂の中で、私たちは普段どこかに置き忘れてきたはずの「寂しさ」や「あきらめ」、そして「かつての愛おしい記憶」と再会することになるかも知れません。

歌詞の中で主人公は、雪の降る街を一人歩きながら、幸せだった頃の自分を振り返る。降り積もる雪は、まるで過ぎ去った時間を覆い隠そうとしているかのようであり、同時に、心の中に澱(おり)のように溜まった未練を優しく肯定してくれるようでもあります。

しかし、この歌が単なる悲歌(エレジー)で終わらないのは、その旋律の奥底に、凍てつく土の下で芽吹く時を待つ「春」の気配が潜んでいるからであります。