チェロリストとは:チェロの深遠な響きを奏でる人々 【チェロの世界へようこそ】

ある日、偶然耳にしたチェロの音色に、私は心を奪われました。その豊かな響きは、まるで私自身の感情を代弁してくれるよう。そんな感動を与えてくれるチェロリストという存在について、もっと深く知りたいと思いました。
静寂を破り、深く、そして温かく響き渡る音色。それはまるで、遠い記憶の扉を開くように、あるいは語りかけるように、私たちの心にそっと寄り添います。そんな豊かな音色を紡ぎ出す、チェロという楽器を紹介したいと思います。
チェロってどんな楽器
西洋のクラシック音楽おける重要な楽器の一つで、オーケストラによる合奏や弦楽四重奏、弦楽五重奏、ピアノ三重奏といった重奏の中では低音部を受け持ちます。また独奏弦楽器としてはヴァイオリンと並んで重要であり、多くのチェロ協奏曲やチェロソナタが書かれています。
チェロは、ヴァイオリンの属の楽器であるヴァイオリンやヴィオラとほぼ同じ構造であるが、低い音を出すために形全体が大きく、特に厚みが増している。また、チェロはその大きさと重さゆえにヴァイオリンやヴィオラのように顎で挟んで保持することが困難なので、エンドピン(床に立てて楽器を支える棒状の部品)を床に立てて演奏します。ヴァイオリン属では低音楽器になるほど胴体と弦の角度が大きいため、ヴァイオリンに比べると駒が高く丈夫に作られている。弓もヴァイオリンなどより太いが、長さは逆に短いです。

17世紀前半までのチェロは、まだ弦の数が定まっておらず、3弦~5弦のものが使われており、調弦法も様々でした。しかし、17世紀前半にイタリアで4弦によるチェロが一般的になり始め、徐々に他の国々にもそれが浸透していきます。 18世紀以降、指板が次第に長くなり、より大きな音が出せるように細部に変更が加えられ始めました。
写真《Amazonより出典》
オーケストラでは、低音パートを支え、音楽全体に深みと安定感をもたらす重要な役割を担います。また、室内楽では、他の弦楽器と対話し、豊かなハーモニーを織り成します。そして、ソロ楽器としては、その叙情的な音色で聴衆を魅了し、唯一無二の世界観を築き上げます。
チェロ:魂に響く、深遠なる音色
弦楽器の中でも、ひときわ私たちの心に深く響く楽器、それがチェロです。その堂々とした姿は、ヴァイオリンやヴィオラに比べて大きく、奏者が抱え込むようにして演奏する姿は、まるで楽器と一体となっているかのようです。しかし、チェロの真の魅力は、その見た目以上に、そこから紡ぎ出される「音色」にこそあります。
人の声に最も近い楽器
チェロの音色は、しばしば「人の声に最も近い楽器」と表現されます。温かく、豊かで、そして深い響きは、まるで心の内側に語りかけるかのように、聴く者の魂に触れます。低音域では、大地に根を張るような安定感と包容力があり、聴く者を優しく包み込みます。一方で、高音域では、伸びやかで切ない歌声のように、感情豊かにメロディを奏でます。喜び、悲しみ、情熱、そして静寂——ありとあらゆる感情を、その深遠な響きの中に溶け込ませることができるのです。
なぜ人の声に最も近いの?
- 音域の近さ: チェロの音域は、男性の低音から女性の高音まで、人間の声の幅広い範囲をカバーしています。このため、チェロの演奏は、まるで人間の歌声が重なっているかのように、私たちに親しみやすく、心に響く音色を生み出します。
- 豊かな表現力と音色: チェロは、その豊かな音色と表現力から、非常に感情豊かに演奏できる楽器です。まるで人間が感情を込めて歌い上げるように、チェロも強弱や音色の変化によって、様々な感情を表現することができます。温かみのある、なめらかな音色は、特に人の声と通じるものがあるとされます。
- 演奏方法と身体性: チェロは、両膝で挟み込み、両腕で包み込むように演奏します。この抱きかかえるような姿勢や、弦を弓で擦る動作が、人間の喉を使って歌う動作と通じる、という見方もあります。また、音から音へのなめらかな移行(レガート)が、歌声のように聞こえる、という指摘もあります。
- 感情への訴えかけ: 上記の要素が組み合わさることで、チェロの音色は聴く人の感情に直接語りかける力を持っていると言われます。単に美しい音というだけでなく、私たちが本能的に感じる「人間らしさ」に触れるため、チェロの音色に魅了される人が多いのかもしれません。
ただし、これらの理由は、科学的な根拠だけでなく、心理的な要素や主観的な感覚も大きく関わっていると考えられています。古くから様々な楽器が「人の声に近い」と言われてきましたが、チェロは特に多くの人にそのように感じられている楽器の一つです。
多彩な表情を持つ響きはどうやってだすのか
チェロの音色は、奏者の弓の動かし方や指の繊細なタッチによって、驚くほど多彩な表情を見せます。チェロの音色には、言葉では表現しきれないほどの魅力が詰まっています。一度その深遠な響きに触れると、きっとあなたもその虜になることでしょう。
ではどういった技術をもって、チェロリストは演奏されているのかを紹介します。
- 甘く、なめらかなレガート:弓を長く均一に動かすことで生まれる、途切れることのない滑らかな音色は、まるで絹糸のように美しく、聴く者を陶酔させます。
- 力強く、情熱的なフォルテ:弓圧をかけ、弦を深く振動させることで、胸に迫るような力強い響きを生み出し、壮大なドラマを表現します。
- 繊細で、儚いピアニッシモ:そっと弓を弦に置き、微かな振動で奏でられる音は、まるで囁くような、はかなくも美しい響きで、静寂の中に深い感情を宿します。
- 温かく、豊かなヴィブラート:左手の指先で弦を揺らすことで生まれるヴィブラートは、音色に人間的な温かみと奥行きを与え、感情の機微を表現します。
以上のような演奏が出来るようになるには、子供の頃からたゆまない努力を続け、体の成長に合わせて、さらに技術に磨きをかけていく努力をしているのです。家族に音楽家がいる環境などによって始める人が多いかも知れませんね。また大きく太い音を出すので、住環境とかにも左右されるかも知れません。
そんな努力は誰にでも簡単には出来ないですが、その演奏を聴いて応援することは誰にでも出来ます。
次の動画を紹介しますので、是非プロの演奏をお聞きください。
注目のチェロリストたち:個性豊かな音の世界
チェロの豊かな音色は、時に心を癒し、時に魂を揺さぶります。その深みのある響きは、まるで語りかけるような温かさで、私たちを非日常の世界へと誘います。そして、そのチェロを奏でるチェリストたちは、一人ひとり異なる個性と感性で、楽器に新たな命を吹き込みます。彼らが紡ぎ出す音は、ときに力強く、ときに繊細で、その音色には奏者の人生や哲学が凝縮されています。
- 佐藤晴真
- 宮田 大
- yoyoma(ヨーヨーマ)
- Stjepan Hauser (ステファン・ハウザー)
今回はクラシック界において、国内外には巨匠といわれるチェリストは何人もいらっしゃいますが、比較的若手のチェリストを4名ご紹介したいと思います。
1.佐藤晴真
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を卒業後、ドイツに渡り、現在はベルリン芸術大学に留学しました。2019年には、ミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ部門で日本人として初めて優勝し、国際的に注目を集めました。
2018年には、ルトスワフスキ国際チェロ・コンクール第1位および特別賞を受賞。ほかにも、日本音楽コンクール第1位および徳永賞・黒柳賞、ドメニコ・ガブリエリ・チェロコンクール第1位のほか、齋藤秀雄メモリアル基金賞、出光音楽賞、日本製鉄音楽賞など受賞多数。これまでに、林良一、山崎伸子、中木健二らに師事。現在は、ベルリン芸術大学にてイェンス=ペーター・マインツに師事しています。
国内外のオーケストラとも数多く共演を重ねており、19年には本格的にリサイタルデビュー。18年には、ワルシャワにて「ショパンと彼のヨーロッパ国際音楽祭」に出演。今後もプラハ放送交響楽団など国内外のオーケストラと多数共演を予定しています。
2.宮田 大
音楽家の両親の元に生まれ、3歳よりチェロを始めました。
桐朋音楽大学ソリスト・ディプロマコースを首席で卒業し、スイスとドイツに留学し、2013年にはソロでドイツのクロンベルク・アカデミーを首席で卒業しました。
受賞歴は2009年、ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールにおいて、日本人として初めて優勝。これまでに参加した全てのコンクールで優勝を果たしています。その圧倒的な演奏は、作曲家や共演者からの支持が厚く、世界的指揮者・小澤征爾にも絶賛され、日本を代表するチェリストとして国際的な活動を繰り広げています。
スイスのジュネーヴ音楽院卒業、 ドイツのクロンベルク・アカデミー修了。
チェロを倉田澄子、フランス・ヘルメルソンの各氏に、室内楽を東京クヮルテット、原田禎夫、原田幸一郎、加藤知子、今井信子、リチャード・ヤング、ガボール・タカーチ=ナジの各氏に師事しました。
これまでに国内の主要オーケストラはもとより、パリ管弦楽団、ロシア国立交響楽団、ハンガリー放送交響楽団、S.K. ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団、スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団などと共演しています。
チェロ奏者では異例のサントリーホール、ミューザ川崎など 2,000 席以上のホールが満席になったことでも話題を呼びました。
4.yo-yo ma(ヨーヨー・マ)
1955年中国人の音楽家の両親のもとパリで生まれました。4歳より父にチェロを学び、5歳のときにリサイタルを開いた。1962年ニューヨークに移住。9歳の時からジュリアード音楽院にてレナード・ローズに師事。10代でカザルスやロストロポーヴィッチら巨匠たちと肩を並べるアーティスト、と評価されました。その後ハーバード大学にも学び、古典文学で名誉博士号を授与されています。
ソリストとして世界中のオーケストラと共演するとともに、多くの室内楽の演奏も彼の友人たちと多彩にこなしています。、従来のクラシックの枠組みを超えて、アメリカのカントリー・ミュージックをベースに創作した「アパラチア・ワルツ」、タンゴの革命児ピアソラの作品を演奏した「プレイズ・ピアソラ」等のアルバムの録音で幅広い層のファンを獲得しました。
5.Stjepan Hauser (ステファン・ハウザー)
1986年6月15日生まれ、ユーゴスラヴィア(現・クロアチア)・プーラ出身のチェリスト。音楽一家で育つ。10代の時にルカ・スーリッチと出会い、ザグレブの音楽アカデミーやウィーンで共に学びました。その後、英・マンチェスターの王立北部音楽大学で研鑽を積む。2011年にスーリッチとのチェロ・デュオ、2CELLOSとして始動しました。YouTube上にアップしたマイケル・ジャクソンの「スムース・クリミナル」のカヴァーで一躍注目され、同年にアルバム・デビュー。以来、高い人気を博し、来日ツアーも開催。2020年にソロ名義“ハウザー”として初のクラシック・アルバム『クラシック』をリリースしました。
おわりに:チェロの音色と共に広がる世界
これまで4名のチェリストたちの魅力をお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?彼らが奏でる音色には、私たちを深く感動させる特別な力があります。チェロという楽器が持つ温かさと、それを最大限に引き出すチェリストたちの情熱が織りなすハーモニーは、きっと皆さんの心にも響いたことと思います。